食の違いが様々見られる関東と関西、今回は「すき焼き」に注目。
和食の代表格でもあるすき焼きには、東西でどんな違いがあるのでしょうか。
知れば今すぐすき焼きが食べたくなる、基本のレシピやおすすめ具材もまとめています。
関東と関西、すき焼きの違いはズバリ…!
Which(どちらが)
関東では
What(何を)
割り下を使って
How(どのように)
肉や野菜を煮込む
作り方が主流です。
Which(どちらが)
関西では
What(何を)
牛肉を
How(どのように)
先に焼いて味付けしてから
他の具材も加熱していく作り方が主流です。
煮込む関東、焼く関西。すき焼きの違いは「作り方」にあった!
関東のすき焼きは割り下で“煮る”、関西は肉を“焼いて”味付けするのが主流です。
肉も野菜も一緒に煮込んでいく関東風に対し、先に肉を焼き、その後火の通った野菜もいただくのが関西風となります。
煮るか焼くか、調理法の違いでその味わいにも差が出てきますよ。
関東風すき焼きの特徴
関東のすき焼き、その特徴は「割り下」を使って“煮る”という点です。
割り下とは、醤油やみりん、だし汁などを合わせた液体のこと。
先に軽く肉を焼く場合もありますが、メインは煮る調理法となります。
割り下を一煮立ちさせたら、肉や野菜を加えてグツグツ。
煮込むことで素材の旨味が汁に溶け出し、まろやかで上品な味わいに仕上がるのです。
割り下の味が均一に行き渡るので、味付けの難易度も高くありません。
関西風すき焼きの特徴
関西のすき焼きは、先に鍋へ牛脂を引いてから牛肉を“焼き”ます。
途中で砂糖と醤油を入れて、肉に味付け。
あとは溶き卵にお肉をつけて、豪快にいただきましょう。
野菜は肉を焼いたあと、あるいは肉を端に寄せてから加え、加熱していきます。
この時野菜から水分が出るため、それを考慮しながら醤油や砂糖の量を調節するのです。
先に肉を焼いて味付けすることで、その美味しさをしっかり味わえるのが関西風の醍醐味。
肉以外の具材により味付けが変わり、人それぞれのすき焼きが楽しめます。
なぜ関東と関西で違いがあるの?
牛肉食が解禁された文明開化の頃、関東で流行した料理に「牛鍋」がありました。
牛肉とネギを味噌、醤油などで煮立てて食べるものです。
当時の牛肉はそこまで質が良くなく、煮ることで柔らかくし、味噌やネギで臭みを消して食べていたと推測されます。
一方の関西では、肉を焼いて味付けして食べる「すき焼き」がありました。
関東大震災の後、関西風のすき焼きが関東に進出し、広く知られるように。
牛鍋由来の煮込む調理法が活かされ、関東風のすき焼きとなって浸透したのです。
すき焼きの歴史や起源
すき焼きの語源は、農機具の「鋤(すき)」からきていると言われています。
鋤の上で魚や野菜を焼いたものをすき焼きと呼んでおり、そこから牛肉を焼いて食べる料理を指すようになったとか。
そのほか、“すき肉を使っているから”という説もあります。
仏教信仰のあった日本では、古くから牛肉を食べる習慣がありませんでした。
明治時代に入り西洋文化が伝わったことで、牛肉食が一般に浸透。
牛鍋ブームに始まり、関東へ関西のすき焼きが伝来、やがて牛肉は和食に欠かせない存在となったのです。
“SUKIYAKI”として海外でも知られるなど、牛肉を用いたすき焼きは代表的な日本料理になりました。
野間万里子(2014)「近代日本における牛肉食の史的研究
―生産・供給と消費の相互連関に着目して―」PDF(参照2020.9.11)
山下満智子(2016)「日本の食文化の歴史」PDF(参照2020.9.11)
【クックドア】日本の肉食文化の始まりは明治時代?(参照2020.9.11)
わりしたの歴史 | すき焼のたれ | エバラ食品(参照2020.9.11)
財団法人 関西・大阪21世紀協会 | 大阪鍋物語(参照2020.9.11)
関東・関西風すき焼きの基本レシピ
自宅で手軽に作れる関東風、関西風それぞれのすき焼き。
基本的なレシピを知っておき、食べ比べしてみるのも良いでしょう。
関東風すき焼きの作り方
<材料(4人分)>
好みのすき焼き具材:牛肉、野菜、豆腐、白滝 など
割り下:酒、醤油、みりん各100ml・砂糖 大さじ6
牛脂 適宜
<作り方>
1. 材料は食べやすい大きさに切り、白滝があれば下茹でしておく。
2. 熱した鍋に牛脂をひき、馴染ませた所に肉を入れてサッと焼く。
3. ネギ、豆腐を焼き、割り下を半分ほど加える。さらに他の材料も加えて煮る。
4. 全体に火が通ったら完成。残った割り下は、材料を入れる分ずつ加えて味を調整する。
先にお肉を軽く焼き、後は割り下でしっかりと煮込んでいく関東流のすき焼き。
具材全体に旨味が行き渡り、まろやかなテイストに仕上がります。
生卵と合わせれば、より優しいコクに包まれて満足度アップ。
グツグツと煮える音にも食欲がそそられるでしょう。
関東風すき焼き | 夏梅美智子さんのレシピ【オレンジページnet】プロに教わる簡単おいしい献立レシピ(参照2020.9.11)
関西風すき焼きの作り方
<材料(4人分)>
好みのすき焼き具材:牛肉、野菜、豆腐、白滝 など
味付け用の調味料:醤油、みりん、酒 各150mlを混ぜておく
砂糖と牛脂 適宜
<作り方>
1. 材料は食べやすい大きさに切り、白滝があれば下茹でしておく。
2. 熱した鍋に牛脂をひき、肉を広げて焼く。
3. 肉の上に砂糖をふりかけ、さらに味付け用の調味料を少々加える。
4. 3の肉を取り出し、次の肉を入れて焼く。ネギも加えて焼き目をつけたら、残った調味料を加えて他の具材も入れる。
5. 砂糖で味を調整しながら火を通す。味が濃い場合は水で薄め、具材に火が通ったら完成。
3で焼いた肉は、先に食べるのがポイント。
牛肉の美味しさをガッツリ味わえる、関西風のすき焼きです。
最初に好きなだけお肉をいただいてから、野菜を加えていくというスタイルもアリ。
家庭それぞれの方法と味付けで、関西風すき焼きを楽しんでください。
関西風すき焼き | レシピ一覧 | サッポロビール(参照2020.9.11)
変わり種からアレンジまで!すき焼きの色々な楽しみ方
ちょっと変わった材料から、一工夫加えた味変の仕方まで。
すき焼きを隅々まで堪能できる、イチオシ具材やアレンジ方法を紹介します。
こんなものまで?おすすめ変わり種具材
牛肉や白菜、春菊といった定番のすき焼き具材。
これら以外にも、家庭や地域によって様々な変わり種具材が存在します。
おすすめの材料や、地域の色が強いものまでを集めました。
・牛肉が苦手なら「鶏肉」をどうぞ
京都などでよく見られる「鶏肉」を使ったすき焼き。
“鶏すき”と呼ばれ、その名の通り牛肉の代わりに鶏肉を入れます。
もも肉ならジューシーに、胸肉ならヘルシーな一品に。
牛肉が苦手な人にもおすすめです。
・甘みが増し増しになる「たまねぎ」
加熱すると甘さが際立つ「たまねぎ」は、すき焼きにもピッタリの具材です。
醤油と砂糖の甘辛いタレとの相性抜群。
たまねぎの甘みが溶け出し、全体の美味しさを底上げしてくれますよ。
トロトロに煮込むのも、焼きメインで少し歯ごたえを残すのもアリ。
・パンチの効いた風味が特徴「葉にんにく」
すき焼きの具材としてはマイナーな「葉にんにく」、こちらもイチオシです。
見た目はニラやネギに似ていますが、香りはにんにくそのもの。
煮込むと全体にその風味が行き渡り、スタミナ満点のすき焼きに仕上がります。
ビールとの相性もバッチリな、変わり種具材の1つです。
・ 関東では当たり前?「麩(ふ)」
ふわふわ、もっちり食感の「麩」、特に関東では生麩である「ちくわぶ」を入れるケースも。
具材の出汁がたっぷりでたお汁、それをヒタヒタに吸い込んでくれるちくわぶは、煮込んで作る関東風すき焼きにもってこい。
おでんの具としても定番な、関東地域では馴染みのある具材なのですよ。
まだまだ終わらない!すき焼きの締めやアレンジ法
具材を入れて楽しんだ後のすき焼き、他にも美味しい食べ方があります。
定番は、締めのうどん。
具材の旨味がぎっしり詰め込まれた汁、そこにうどんを絡めていただけば、お腹も心も満たされますね。
ご飯とチーズを加えると、リゾット風の締めに早変わり。
煮込んだ具材が余ったら、肉じゃがや丼ものにアレンジする手もありますよ。
具材を細かく切ってジャガイモと合わせれば、すき焼き風味のコロッケにも大変身です。
意外とアレンジ多彩なすき焼き、ご家庭それぞれの工夫で楽しんでみましょう。
【保存版】「すき焼きの具材」総まとめ!定番から変わり種まで – macaroni(参照2020.9.11)
すき焼きを楽しむレシピ7選!人気の具材や割り下で | クラシル(参照2020.9.11)
すき焼きに何入れる? 麩、豚、大根…意外なもの続々|グルメクラブ|NIKKEI STYLE(参照2020.9.11)
すき焼きの主な違いは「作り方」。関東は割り下で煮る、関西は先に肉を焼いて食べる
関東では肉や野菜を割り下で煮込み、関西では先に肉を焼いて味付けするすき焼き。
作り方の違いは、味にも異なる美味しさを生んでいます。
家庭や地域ごとの具材、締めやアレンジなども楽しめる料理です。
王道から変化球まで、すき焼きの魅力を味わい尽くしてみてください。
出典
こんなに違うの?すき焼き<関東 vs 関西>比較 | クックビズ総研(参照2020.9.11)
坂井健(2002)「「牛鍋」はどんな鍋だったか-『安愚楽鍋』を中心に-」PDF(参照2020.9.11)
松尾雄二(2015)「文献にみる牛鍋とスキ焼きの歴史について」PDF(参照2020.9.11)